2013年2月7日木曜日

小学校の思い出2

ある日I先生は帰りのHRのあと、帰りのあいさつをさせずにクラス全員を着席させた。 
そして縦5 cm 横 30 cm くらいの紙の束を取り出した。 

その紙には1枚1枚、2ケタの足し算または引き算の数式が書かれていた。 
48 + 86 = 
とか 
92 – 57 = 
とか。 
I先生は紙の束から1枚取り出し、1秒ほど子どもたちに数式を見せてすぐ裏返し、「今の計算の答えがわかった人!」と挙手を促した。 

要するにI先生がチラッと見せた数式を暗算し、最初に正解した人のみ帰宅を許される。その子が帰ったらまた別の数式をチラッと見せる。早く正解した人から家に帰れるというゲーム。数式をメモするのは禁止。 

しつこいようだが私は優等生だった。算数なんか100点満点当たり前。少なくとも90点未満はとったことがない。まあ中学受験では算数は苦手科目だったが、小学校のテストなんか数字を書く練習みたいなもんだった。 

が、計算だけはものすごく苦手だった。そして暗算が致命的にダメだった。そのうえ、なぜか数字を覚えられないという弱点もあった。これは今でもそう。規則性のない4個の数字を1秒以内に覚えるのは至難の業。 
そう、私はI先生がチラッと見せた数式を記憶するだけでいっぱいいっぱいだったんだよ。暗算とかそれ以前の問題だった。 

そういうわけで、例の着席常連組が全員帰っても私は帰れなかった。いつもバカにしていた隣の席の男子はこういうのが得意らしくて、わりとさっさと帰ってしまったのも屈辱的だった。 
計算早い人からどんどん帰るので、後の方になればなるほど最初の正解者になりやすくなるはずなのだが、それでも私は帰れなかった。 

4時半を過ぎてクラスの半分ほどが帰ってしまい、残ったのは「回答が遅い」というより「回答できない」という部類になっていた。
こうなってくると埒があかないのでI先生は新しい問題を出すのをやめ、教室に飾っていた赤い花の鉢植えを教卓の上に持ってきた。で、 

「この花を見てくれ。こいつをどう思う?」 

すごく……きれいです……では不合格。先生の気に入るような、「感想」の正解を当てねばならない。自分がどう思うかじゃなくて、先生がどう答えて欲しいかを当てるクイズだ。 
で、「正しい感想」を述べたら帰れるというルール。 

こうなると私のターン。出題から5秒で挙手し、 
「小さな鉢でけなげに美しく咲くこの赤い花を見て、私も生きる希望が沸いてきました」的なことを、金八先生が涎を垂らして喜びそうな言い回しで、適当に熱く語って速攻で帰った。 



翌日登校すると、普段あまり話さない男子達が私の席にわっと集まってきた。そして 
「ばっち、夕焼け見てどう思う???」 

昨日暗算ができず、赤い花の「正しい感想」も思い浮かばなかった子たちは「夕焼けについて思ったことを原稿用紙1枚にまとめなさい」という宿題を出されて、やっと帰宅を許されたらしい。で、夕焼けについての「正しい感想」もわからない彼らは、私に正解を聞きに来たわけだ。 

知らねーよww 

0 件のコメント:

VPS