2015年7月28日火曜日

劇場版 進撃の巨人 後編

後編の感想書く前に、昨年末に観た前編の感想をば。
前編の感想はブログではなくツイッターに書いたので、それをこちらに貼り付け。

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そうだとは聞いていたけど、本当にテレビ版の切り貼りだった!新規カットもセリフの録り直しもほとんどなかった!だが、そこがいい。
立体機動を大画面で観たかったので映画館に行ったのだが、期待通りの迫力だった。あれだけの映像を自宅のテレビで観るなんてもったいない!
あと音も良いね。映画館だから当然だね。巨人の足音がズウゥゥゥンとお腹に響いて、恐ろしさ倍増。
つまりテレビアニメを映画館で観たんじゃなくて、映画館の大画面に耐えうる緻密な映像をテレビで観ていたってことなのさ!

でもまぁ、本当にテレビの省略版なので、「進撃に興味あるけど、今さら漫画全巻読むのもアニメ全話観るのもしんどい」という人か、「あの立体機動を大画面で観たい」という人以外にはおすすめしない。
劇場版は漫画やアニメを見ていない人にはわかりにくいのかというと、そうでもない。いや、わからないところも説明不足なところも山ほどあるが、ストーリーを大筋で理解できるようにうまく組み直されていると思う。むしろ漫画やアニメを見ていない人におすすめ。
ただ2時間の尺に収める都合上、キャラクターを掘り下げるようなストーリーが大幅にカットされているため、どうしてもセリフや行動が取ってつけた感じというか、ご都合主義的に感じてしまうところはある。感動シーンもお涙頂戴の押し売りになってしまう。
なので劇場版を見て「確かにアクションはすごいがストーリーが薄い」と思った人は是非漫画かテレビ版を見て欲しいなぁ。

一番不満なのが、子鹿隊長をアルミンが説得しに行くシーン。TV版ではここでアルミンがエレンとミカサに「5年前二人がアルミンに救われたこと」を告げられるのだが、映画では省略されていて、アルミン自身が「僕が説得する」と提案していた。
ここはアルミンが「二人に守られてばかりだった」というコンプレックスを乗り越え、エレン&ミカサの自分への信頼を認識し、弱ミン強ミンという大変身を遂げるシーンなので、手を加えて欲しくなかった。エレン&ミカサがアルミンに決定を委ねるのと、アルミン自身で提案するのでは、話が全然違う。
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後編もやはり音と映像が素晴らしかった。
例えば女型が巨人化エレンの上顎から上を蹴り飛ばすシーンでは、頭部が劇場左後方に落ちて転がる音響が見事だった。さすが映画館。
感想をググると、BGMTV版に比べて盛り上がりに欠ける、という意見が多かったが、私はそんなに気にならなかった。映画版の悲壮感溢るるBGMは、ストーリーの流れとよく合っていたように思う。

今回もTV版を約半分の尺に収めたものなのでカットが多かったが、前編以上に一つの作品として自然な仕上がりになっていたと思う。
TV版では冗長に感じる部分が映画ではバッサリ無くなっていて、かなりテンポが良くなっていた。

一つ難癖を付けるとすれば、序盤の裁判のシーン。
TV版では
ザックレー「巨人化エレンはミカサを殺そうとしたとの報告があるが、本当か?」
ミカサ「はい。しかし巨人化エレンに2度にわたって命を救われたのも事実。この点も考慮していただきたい。」
ナイル「ミカサは幼少期エレンの生家に引き取られていたことから、ミカサのエレンに対する弁護は信用できない。」

なのが映画版では
ザックレー「巨人化エレンはミカサを殺そうとしたとの報告があるが、本当か?」
ミカサ「はい。」
ナイル「ミカサは幼少期エレンの生家に引き取られていたことから、ミカサのエレンに対する弁護は信用できない。」

となっていて、意味が分からない。ミカサはエレンの弁護はせずにエレン処刑派のナイルにとって有利な証言をしたにも関わらず、そのナイルによって発言を封殺される矛盾。「巨人化エレンに2度にわたって命を救われたのも事実。この点も考慮していただきたい。」はせいぜい数秒しか尺を節約できないのに、なんでセリフを削ったのか謎。

あと、バーサーカー・ミカサの
「エレン……どこにいたって、その女殺して、身体中搔っ捌いて、その汚いところから、必ず出してあげるから……ごめんねエレン、もう少しだけ待ってて。」
がカットされてたのが残念。まあ確かにこのセリフを削っても前後の流れに矛盾はないし、ミカサの狂戦士っぷりも充分に描かれてるからいいんだけどさ。

TVを観ていたときは女型の異様な強さ、得体の知れなさ、人間を片っ端からプチプチ潰していく残忍さにゾッとしたが、映画版では女型の正体であるアニにかなり感情移入した。
それは女型の正体を知らずに観たか、知ってて観たかの違いもあるが、映画自体アニに焦点を絞った形で再構成されていたように思う。
マルコの死や、訓練兵の少年少女が調査兵団に入団するまでの葛藤などをほとんどカットした代わりに、TV版には無かったアニの訓練兵時代のエピソードを挿入していた。

新兵思いのネス班長や厳しくも暖かいリヴァイ班のメンバーを含む、数十人?もの兵がアニに惨殺されたわけだけれども、つまり数十人もの人間が次々とアニに襲いかかったということなんだから、アニも手段を選んでいられないよな。
だって人間にたとえたら約 10 cm もの巨大な蜂が複数、自分を一撃で殺すことのできる武器を持って、ブンブン飛び回ってるんだよ?一瞬でも気を抜けば殺されるんだよ?そりゃ見つけるなり駆除していくしかないでしょうよ。

アニだって本当は殺したくないんだよね。
でも彼女は「戦士」だから、彼女は彼女の正義のために戦わなければならないし、その過程で人を殺めてしまうことについて腹をくくらなければならない。

今回アニはエレンを生きたまま連れて行かなければならなかった。
どこに連れて行く気だったのか、連れて行ってどうするつもりだったのかは映画はもちろん原作でもまだ明かされていない。
とにかくエレンを確保するため、アニは内通者からもたらされた「エレン及び特別作戦班は右翼前方にいる」という情報を頼りに、策敵陣系に襲いかかった。
次々と斬り掛かる手練の調査兵をちぎっては投げちぎっては投げ、万が一にもエレンを殺さないように細心の注意を払いながら必死に探したものの、エレンは見つからない。
それで陣形の内側へ向かい、途中アルミンに「お前の足の裏にエレンこびりついてんぞ」と嘘をつかれてヒヤッとすることもあったが、なんとか陣形の中央後方で特別作戦班とエレンを発見。

このときの女型の笑顔はものすごく凶悪だけど、でもアニは本当に嬉しかったと思うよ。ああ良かった、やっと見つけた、一時はどうなることかと思った、さあ気を引き締めてラストスパート。

しかしホッとしたのも束の間、アニはまんまと調査兵団の罠にかかる。なんとか急所は守ったものの、腕を落とされるのも時間の問題。このときのリヴァイのセリフ、
「お前はいろいろな方法で部下を殺したようだが、あれは楽しかったりするのか?」
はアニの心をひどく傷つけたと思う。楽しいわけがない。
身動きの取れなくなったアニはついに最後の手段、巨人を大量に呼び寄せ、我が身を食わせた。

と見せかけて、まだアニは諦めちゃいない。女型の身体の崩壊によってもうもうと立ち上る蒸気に紛れ、立体起動で離脱。信煙弾を使ってリヴァイ班の居所を確認し、襲いかかった。
巨人殺しの達人集団とあって、アニは危うく殺されかけるも、彼らの虚をつくことで何とか殲滅成功。やっと邪魔者がいなくなった。
そしてついに巨人化エレンとのタイマンバトルへ。リヴァイ班に負わされた傷の修復が完了するまでは動きが本調子ではなかったが、エレンはそのアドバンテージを生かすこともなく闇雲に殴りかかるバカだったので助かった。
傷が治ってしまえばこちらのもの。エレンの力任せの攻撃をいなし、虚をついて頭部を吹っ飛ばし、そしてエレン本体を確保。ミッション達成、あとは無事に帰るだけ。

と思ったら最後にとんだ邪魔者が現れた。ミカサ&リヴァイの人外コンビ。視界を奪われ、身体中を切り刻まれ、立っていられなくなったアニ。急所に斬り掛かるミカサの攻撃はなんとか阻止できたが、リヴァイに頬の筋肉を切断され、エレンを奪われた。

うん。そりゃ泣くわ。

使命のために心を殺し、人を殺し、それでもやっとエレンを手に入れたのに、最後の最後で奪われるとは。あれだけ人を殺したのに、何の意味もなかった。何も成し遂げることができなかった。ただ無駄に人を殺しただけだった。
VPS