2014年4月15日火曜日

Frozen

「アナと雪の女王」観てきた。ネタバレバレでとりとめなく感想書く。あと私はこの作品の良さを全く理解できなかったので、「素晴らしかった!」「感動した!」という方の気分を害すかも知れないので、スルー推奨。



まず良かった点。映像が素晴らしかった。音楽も素晴らしかった。アナとハンス王子のデュエットとか、エルサ・アナの掛け合いとか、お腹から共鳴させられる気がした。
そして何と言ってもエルサの「Let it go」。迫力ある歌唱と氷の城を建設していく壮麗なCG映像との融合が圧巻。自分の力を恐れ、他人に知られること、他人を傷つけることを恐れてきたエルサが「やってられんわッハーーー!!!」「っしゃああああああ、自由じゃあ!!!」と開花していく様が良かった。固かった表情や仕草もどんどん変化して、ワルそーな化粧をしたセクシー美女、でもすごく生き生きしてる、そこら辺の表現が良かった。

しかしストーリーがなぁ……。正直なんであんなにもてはやされているのか、人々がどこに感銘を受けているのか、全く理解できない。今作よりも「ラプンツェル」の方が格段にクオリティ高かったと思うんだけど、あんまり流行ってなかったよね?なんでだろ。震災とバッティングしたからかな。

私はディズニー映画が好きだ。「白雪姫」「眠りの森の美女」等往年の名作も好きだし、「アラジン」や「リトルマーメイド」は小学校の頃母に映画館に連れて行ってもらった思い出の作品だし、最近の「魔法にかけられて」や「塔の上のラプンツェル」も安定したエンターテイメント性と音楽の素晴らしさに「さすがディズニー」とため息が出る。一番好きなのは「ノートルダムの鐘」で、何度見返したか知れない。

ご都合主義の大団円?それがどうした。それがおとぎ話ってもんだろう。野暮なことを言うな。

と、ディズニー好きであると同時にディズニー臭さに耐性があると自負していたんだが、「アナと雪の女王」はどうもピンと来ない。

まず初めから腑に落ちない。
魔法の力をコントロールするには精神をコントロールしなければならない。だから平静を保つこと。恐れを抱かないようにすること。

とアドバイスされた結果、なんで幼女を幽閉することが解決になると思うんだろう。逆効果に決まってるじゃん。
アナの頭に直撃した魔法を取り除くために魔法の記憶を消去するのはいいが、その後もアナに対してエルサの魔法をひた隠しにする理由が分からない。
実際、一連の事件はアナが魔法のことを知らなかったことで起こっている。魔法を秘密にすることはデメリットしかない。
だからアナが意識を取り戻したらすぐに事情を説明して、これまで通りエルサと遊ばせれば良かったんだよ。そしたらエルサも余計なプレッシャーを感じずに、ときどき失敗することもあるかもしれないけど、充実した家庭生活の中で精神的安定を得て、心身の成長と共に魔法のコントロールも覚えていくんじゃなかろうか。
夜尿症の子どもにプレッシャーを与えたって夜尿症が治らないのは常識じゃないか。「おねしょが治るまでこの部屋から出しませんよ!」と躾けた結果、おねしょを恐れるあまり逆に頻度が増え、家から出られないせいで他人と関われないものだから精神が全く成長せず、結果大人になってもおねしょが治らない、みたいな。

親が悪い。

そう思いながら鑑賞してたので、「そしてエルサは愛を知り、みんなは魔法を受け入れ、幸せに暮らしましたとさ」というオチにも、だから最初からそうすりゃ良かったじゃん、としか思えなかった。

あと王国に王女の魔法を隠蔽する理由も分からない。まぁ王室はスキャンダルを嫌がるものだから仕方ないのか。王女の魔法を知った結果国民がパニックになるとして、それをコントロールする国力がかの国にはないのかもしれない。
でも最後に魔法の力を国民が受け入れて楽しくやってる様を見ると、やっぱり初めからこうすればよかったんじゃないの?と思ってしまう。

で親が死ぬんだが、親が死んだあとは誰がエルサを幽閉していたのか?あるいはエルサが自ら引きこもってたのか?
どっちにしても、城に残った数少ない使用人がエルサの魔法を把握していないのはおかしい。王位継承者が本人の意思であれ三年も引きこもるとか有り得ない。

あとアナというスペアがありながら、明らかに欠陥があるエルサを「長女だから」という理由で女王に据えるのはあまりに非合理的。もちろん本人も王位を望んでないし。

魔法を克服するまで外に出ないという方針を取るなら親の死後もそれを貫くべきだし、克服できていない以上王位はアナに継がせるべきだった。エルサに王位を強いた周囲が魔法のことを知らなかったのだとしても、十数年も自室から出てこない引きこもりを王位に据えようとするのはおかしい。「姉」であることがアナ戴冠への障害なら、人里離れた雪山にエルサ王女を放り出して死んだことにでもした方が現実的。結局似たような状況になったしな。

あと両親が死んだあと3年空位でも国が回っていたのに、エルサが遁走しアナが追いかけるにあたって、どうしてハンスに仮の王権を委譲する必要があったのか不明。

序盤でこれだけの疑問が浮上してしまったので、結局最後まで感情移入できなかったんだろうなぁ。

エルサを抑圧的環境に置きたいという製作上の意図はわかる。エルサが女王にならなければ話にならないし、ハンスが国の権利を委譲されないことには後半のどんでん返しが作れない。
わかるけど、そこへの持って行き方がものすごくヘタクソ。稚拙で不自然。何の必然性も感じられない。「そうするより他に仕方なかった」という状況が作れていない。

ディズニー作品に、おとぎ話に、そこまでガチガチの世界設定を要求しているわけではないが、これはちょっと酷すぎると思う。

あと全体的に盛り上がりに欠けるんだよな。なんでだろう。
テンポが速くて次から次へと色々なことが起こるんだが、そのくせストーリーが進んでいないというか……うまく言えないけど。緩急に欠けるというか。
結局始めからずっと姉→拒絶・妹→懐柔の繰り返しだから飽きるのかな。雪の女王化の前後でエルサにもっと変化を付けた方が良かったと思う。変化を付けた上で、「でも自分を恐れ他人を恐れ、心優しさの裏返しで他人を傷つけることを酷く恐れるエルサの本質は変わっていない」っていう展開とかさ。それはそれでベタだけど。でも変身の前後で見た目しか変わってないってのもどうかと思うよ。

あと時間の感覚と距離感が全く無いのも、いまいちのめり込めなかった原因だと思う。
結局王国と氷の城間の往復しかしてないのだが、どのくらい遠いのかとか、一日二日で辿り着くのかとか、ハンスたちが王国を出たのはアナが出発してから何日後なのか、とか。
あとエルサ遁走まで国の季節が夏だとは言ってなかった気が。そこらへんも行き当たりばったりすぎる気がするんだよな。

あとオープニングの氷を切り出す男達の存在価値が不明。ディズニーのことだからあとで何かあるのかと思った。クリストフのバックグラウンドも特にストーリーには関わってこないし(孤児である、トロールにコネがある、くらい)、あのシーン要らなくね?

なんというか、物語全編を10等分してそれぞれのパートを一人ずつスタッフが作ってあとでくっつけたみたいな、そういうつぎはぎ感があるんだよな。ネタバラまいてる割に結局その場限り。サウナも使わなかったし。

アナが心臓に魔法を受けて、早くなんとかしないと死ぬ!っていうのが一応物語の山場のひとつだと思うんだが、全く緊迫感がなかった。こう、死ぬまでの期限を切ってくれないことには、「どうせ物語的に都合のいいところまで引っ張って、都合良く死ぬか助かるかなんだろ」って思ってしまう。実際そうなったしな。
「今まさに死んでる最中」とか「っていうか殺人者が目の前に」とか「っていうか既に死体」とかなら、たとえ大団円が予想されるディズニーでもハラハラするのに。

ハンスが悪役で良かった。いかにもハンスが咬ませでクリストフが本命なのだが、アナがハンスからクリストフに乗り換えるにあたって、ハンスが実は悪者だった!ってのは実に都合が良い。
その点「魔法にかけられて」のジゼルは潔かった。何の落ち度も無い王子を振って、子持ちの男に乗り換えたわけだから。

あとディズニーなのだから、おとぎ話なのだから、悪者には相応の報いを受けて欲しいね。王子や姫を殺そうとした魔女は、たとえ未遂であっても報いを受けて滅びる。
ならハンスやジジイも死ぬべきでは?まあ所詮奴らは小悪党であって、滅びるほどの価値も無いわけだが。
一国の女王を殺そうとした男を国外追放で済ませるなんて非現実的すぎる。

というわけで、「アナと雪の女王」つまらなかったです。


でもハンスと見せかけてやっぱりクリストフかと思いきやまさかの姉!!!って展開は個性的で面白かった。
VPS