2010年2月8日月曜日

AVATER













観たい観たいと思っていたけど、結局ギリギリ上映最終日まで引き延ばしてしまった。レイトショーだったから、本当にラストだったんだな。


映像はさすがにど迫力だった。もちろん3Dで観たんだけどさ。CGの技術がすごすぎてどこまで実写なのか皆目わからん。

でも激しいシーンは意外に2Dと変わらないもんだな、と思った。2Dでも映画にのめりこむと脳内補正で立体視できるのかな。あるいはスピードが速い映像は3Dの意味があんまりないのかも。

3Dすげえ!って思ったのはむしろ静かなシーンだね。火の粉とか目の前に降ってくると吸い込んでしまいそうで、反射的に息を止めてしまう。

ただ手前過ぎるものはちょっと違和感あるね。遠くにあるものの奥行き感はいいけど。

ストーリーは物足りなかった。いや、単純明快でわかりやすいし、シンプルだから矛盾もないし、いいんだけどね。

ネタバレいやな人はこの先読まないでね。

要は「原住民や獣の住まう森を破壊して稀少鉱物を狙う人間が攻めて来るが、当初人間側の主人公が原住民の娘と恋に落ち、原住民と共に戦って人間を追い出す」という話なんだよね。

でも例えばポカホンタスは「インディアン(今はネイティブアメリカンか)や獣の住まう森を破壊して金塊を狙うイギリス人が攻めて来るが、当初イギリス側の主人公がインディアン娘と恋に落ち、インディアンと共に戦って人間を追い出す」だし、

ターザンとかもだいたいそんな感じ。使い古されたテーマ。

もののけ姫もほぼ同じだね。「サンや獣の住まう森を破壊して鉄を狙うエボシらが攻めて来るが、アシタカがサンと恋に落ち、山の神々と共に戦う」みたいな。いやもちろん、もののけ姫はもっと複雑で深いしオチも捻ってあるけどね。

アバターの設定はよくできてたし、「軍」「企業」「科学者」というキーワードも現代のアメリカの象徴みたいでおもしろかったし、世界観は申し分なかったと思うんだよね。ただ、それをストーリー中で全く生かしていない。

舞台を地球ではない別の星にしたんならその設定ならではの展開にすればいいのに地球と変わらんしね。ただ映像をファンタスティックにしただけで。

しかも企業が狙うのが「鉱物」というのが陳腐すぎる。少なくともその「鉱物」にもっと薀蓄があれば人間たちの取り組みにも納得がいくんだけど、単に「高値がつくから」だもんね。お粗末過ぎる。

原住民と木々や獣が「絆を結ぶ」という設定はすごくよかった。そして、その星全体が「絆」のネットワークを形作っており、人類の脳より10の何乗もの高度な性能を秘めている、という設定もワクワクした。

でもストーリーには全く関係なかった。そういう計り知れないシステムを持っているなら、例えば人間との戦闘に生かしても良かったと思うんだけど。最後の「エイワのご加護で獣たちが人間に襲い掛かった!」ていうのがそれなのか?あんまりだ。

人間と原住民の戦闘シーンもなんか、力押しというか、大味というか。

人間勢の圧倒的な武力を前に、原住民ピンチ!まではいいんだけど、そこからの逆転の仕方がさー、「別の部族が続々集結」「獣たちも頑張った」じゃあねぇ。

先述の恐るべき「ネットワーク」を用いるとか「磁気嵐」を使うとか、あるいは主人公が人間であることを生かして、人間の弱点を突くとかさー。せっかくいい材料を物語の中に散りばめてたんだからさー。

ホームツリー爆破は主人公らに共感して、人間はなんて酷いんだ!と思ったけど、後半の乱戦では原住民が殺されても悲しくならなかったし、人間を倒しても別に爽快感はなかった。どっちもどっち。お互い様。主人公に全く共感できなかった。

オチも不満だ。まず生き残った人間たちを普通に地球に返した点。

散々殺しておきながら、敵方が戦意を喪失した時点で捕虜の人権保護に回るのはアメリカっぽいけどね。そのまま返したらまた12年後くらいに「鉱物」狙って来るよ。皆殺しにするとか地球には返さないとか、二度と人間がこの星にちょっかい出さないようになんらかの工夫をして返すとか、いろいろあると思うんだけどな。

オチの不満はもうひとつ、主人公が人間を捨てて原住民として生きていくところ。

いやそれ自体はいいんだけど、こういう異世界交感もので重要になるのが、主人公がどちらの世界で生きていくか、ということだと思うのね。

例えばポカホンタスはお互い別々に生きていくことにしたし、ターザンは共に生きることにしたし。もののけ姫は別々派。ポニョは共に生きる派。

結論はどっちでもいいんだけど、どちらかを選ぶときは同時に何かを捨てなきゃならんと思うわけ。

しかしアバターの場合、主人公が原住民としての人生を選ぶことに何のコストもない。人間でい続けるメリットが全くない。むしろデメリットしかない。

原住民になれば丈夫な足が手に入るわ、愛する人と一緒にいられるわ、『トルーク・マクト』として崇められるわ、薔薇色の人生。

まあいいんだけどさ。その大団円こそがアメリカなのかもしれないけど。

原住民とのコミュニケーションを図るために、学校を設立して原住民に英語を教えるっていう傲慢な発想がアメリカを風刺していて笑えた。

あと鉱物を狙う実業家が、ホームツリーの惨状を見て心苦しくなるところが、非常に小物っぽくて人間らしくてよかった。

それから大佐が面白い。初めは原住民をゴミ扱いし、圧倒的武力でもってほぼ無力な原住民を殺しまくり、ホームツリーを焼き払って喜んでる悪い奴なんだけどさ。原住民に逆転され敗北必至になったときに、一人戦地に躍り出て最期まで戦うのは卑怯でもなんでもないよね!むしろ相手の強大な力に屈せず、死力を尽くして戦うところが正々堂々としていてかっこいい。この際主人公を殺したところで戦況にはなんの影響も与えないのにね。馬鹿だし狂ってるけど、初めのクレヴァーで卑怯で腹黒い時と比べれば憎めないキャラだ。

4年かけて製作!」という触れ込みだったけど、そのうち311ヶ月以上はグラフィックの開発で、シナリオは1ヶ月程度で仕上げたんだろうなー。という作品でした。

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