2015年6月25日木曜日

Tangled その2

妹が先日「塔の上のラプンツェル」を観たとのツイートをしていたので、それに触発されてまたラプンツェルについて書くよ。

以前書いた感想はこれ。


上記の記事に加え、4年経った今になって補足したいのは
「なぜユージーンはラプンツェルが傷を癒す前に髪を切ったのか」
について。

というのも、私も最近夫と「ラプンツェル」を観たのだが、夫が
「ラプンツェルに治してもらってから髪切りゃ良かったじゃん」
とのたまったのよね。彼の目には
「王子は命を賭して姫を守った!姫の愛が奇跡を起こし、王子は生き返った!感動だ!」
というお涙頂戴展開に持っていくために、「治す前に切る」という不自然なパフォーマンスをねじ込んだように見えたようだ。

わかってないな!
全然わかってない!

重要なのはあのシーンの直前に、姫が魔女と
「私に王子を救わせてくれるなら、私は永久に魔女の所有物となる。」
と契約してしまったこと。童話的に言えば「呪い」だな。
姫は王子を救うため、自身に呪いをかけてしまったんだよ。
この状態で姫が王子を救うと、自動的に姫は魔女の所有物となってしまう。魔女の生死は関係ない。姫は死ぬまで魔女に心囚われ、身体はどこにあっても精神は二度と塔から出られない。
魔女が生きてりゃその後の交渉次第では姫を解放させる望みもないではないが、うっかり殺してしまったら取り返しがつかない。
「王子が助かってから魔女を殺す」ということは、姫を永久に解けない呪いにかけることと同義なのだよ。

「そんな契約、魔女が死んだらどうでもいいじゃん。それより王子が助かる方が大事じゃん。」
と言う人はわかってない。
全然わかってない。

王子の目的は姫を助けること。
姫を魔女の呪縛から解放すること。
機能不全に陥った母娘の共依存関係から、娘を自立させること。
だから娘に自分を助けさせ、然るのちに母親を殺すんじゃ意味ないんだよ。
母親が死んだところで娘は救われないんだよ。
むしろ(娘自身の意志では無いにせよ)母を騙し、母を殺すことで、娘の精神状態は救いようの無い場所にまで墜ちるかもしれない。

姫が「王子を救えたら魔女の所有物になる」という呪いの言葉を吐いた時点で、王子にとっては

・王子が生きて姫が(精神的に)死ぬ
・姫が生きて王子が(腹の傷で)死ぬ

の二択になってしまったわけだよ。

そして王子は自らの命を捨て、愛する姫の呪いを解いた。姫の愛が奇跡を起こして、王子は生き返った。めでたしめでたし。

ラプンツェルは現代風の強かなヒロインだけど、
「一度口に出した言葉は絶対であり、契約であり、呪いである」
という設定はいかにも童話らしくて、私は好きだな。

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