2012年10月11日木曜日

とくダネ(10/9)の感想 3


最後。

・髪の毛から卵子?

菊川怜がスタジオの解説に呼ばれていた八代先生に「たとえば知らないうちに誰かが髪の毛とかから私の卵子を作るってことも可能なんですか?」と質問してた。それに対して八代先生は「不可能ではない」と答えた。

これはちょっと八代先生の答え方が悪いと思う。でも場慣れしていない研究者が生放送のアドリブで思いもよらない質問されたら、その全てに適切に答えるのは難しいよね。

ほぼ不可能なんだけど正確に表現しようとすると不可能とは言いきれない、そう言う意味での「不可能ではない」だと思うんだよね。科学者に言わせたら大概のことは「不可能ではない」だよ、うん。
でもそれを聞いた視聴者は「不可能ではない=可能である、近い将来可能になる」と受け取ってしまうと思うんだ。

で、菊川怜の質問の意図は「この技術を悪用すると、知らないうちに自分の卵子がつくられちゃうかもしれないんですか?」ってことだと思うんだよね。
それに対して八代先生は「それも有り得ますね。」って答えたも同然だと思うわけ。もちろん彼にそのつもりはないし、彼は間違っていないわけだが。

本人に気付かれないように採取できる生細胞は限られているし、そういう細胞からはまだiPS細胞を作れない。いわんや抜けてから時間が経った毛髪をや。
ちょっとDNA鑑定とかと勘違いしているかもね。DNAが取れるからって生きている細胞が取れるわけじゃないよ。少なくとも菊川怜が生きているうちは彼女の知らないうちに彼女の卵子を作ることはできない。

・髪の毛からクローン?

これも菊川怜の質問。「髪の毛から卵子が作れちゃうんですか?クローンも?」って感じで訊いてた。それに対して八代先生は「不可能ではない」と答えてた。

ここでクローンの話が出るのはちょっと「???」だね。クローン作製とiPS細胞作製は全く違う。なんか菊川怜の中ではそこがごっちゃになってる気がする。

そもそも「クローン」の意味を誤解している人が多いと思う。
クローンとは簡単に言えば同じゲノムを持っているってこと。まあ正確に言おうとするとまたややこしいけど、とりあえずそういうもんだと思ってくれ。
そんで「クローン」は自然界にありふれている。ムカゴとか一つの株から殖えた植物はお互いにクローン。挿し木で殖える場合もクローン。
1つの細胞から殖えた酵母や乳酸菌はみんなクローン。ヒトの一卵性双生児もお互いクローン。

どうも「クローン」には新しいスターウォーズに出てたような、顔も背格好も同じ人間が何千何万と大量生産されるような、そういうおぞましいイメージがあるみたいだけど、それは全然違う。

菊川怜の毛髪から生細胞を分離したら、それは菊川怜のクローン。だから「髪の毛からクローンが作れちゃうんですか?」って訊かれたら「作れる」って答えるよ。
(※ちなみに私は抜け毛から生細胞が取れるかどうかは知らん。抜け毛の根元に生細胞ってついてたっけ?ないよね?それなら抜け毛からクローンを作るのは無理。)

菊川怜の訊きたいことはそうじゃないよね。髪の毛とかそういうありふれた自分の断片から、自分と同じ人間が作られてしまうんじゃないか。iPS細胞とはそういう恐ろしい面もあるんじゃないのか。ってことだよね。

まず上述の通り、本人に気付かれないように生細胞を手に入れるのは非常に困難。それから既にクローン人間作製は禁止されているし、そもそも今の科学技術では実現不可能。
ただ倫理的制約と技術的制約をクリアすれば、いつかヒトクローンを作れるようになるかもしれない。
そういう未来のために今から議論を交わし、一人一人の生命倫理観を育てていくことは非常に重要だと思う。

ただ、クローン人間とiPS細胞とは全然違う話。

番組ではそこがうやむやのまま流れてしまったので、ひとこと言いたくなってしまったのだよ。ひとことどころじゃないけど。

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